フランスの放課後児童クラブを視察して(放課後児童クラブ) -フランス-
2018年3月28-30日
フランスのシャトールノー(Chateau Renault)にて保育所、幼稚園、小学校、そして放課後児童クラブを視察しました。本報告では放課後児童クラブについてご報告します。
(写真1 ソーシャルセンター外観
(写真2 ソーシャルセンター入口)
シャトールノー市はTGVでパリから1時間強、ロワール地方(Centre-Val de Loire)にある人口5000人くらいの小さな街です。放課後児童クラブは、ハローワーク、家探し、健康などを総合的に情報提供する市のソーシャルセンター(以下、センター)の中に組み入れられています。利用者はコピー、パソコンは無料で利用でき、コーヒーや水は無料で提供されています。全ての市民が利用できる、家族全員で利用できる場所をつくるという理念から、大人と子どもの居住場所を明確にすることで共存できるシステムを作りました。入口は一つで入退出のチェックを常駐職員が行います。ソーシャルセンターの受付時間は10:00-12:30、13:00-18:30、放課後児童クラブについては学校の前後に利用するので基本7:15-9:00と16:15-18:30(夏休みなど長期休暇は9:30-18:30)となります。放課後児童クラブの利用時間は15分単位で加算され、給食を希望する場合はインターネットや窓口で1週間前までに申し込みが必要となります。
(写真3 大人のスペース (ハイチェアも))
(写真4 低年齢用のプレイルーム)
放課後児童クラブは幼稚園に就園する3歳から利用可能となります。送迎は保護者が子どもたちを部屋の中まで連れていき、部屋まで迎えに行かなければなりません。保護者が就労していなくても放課後児童クラブは可能です。但しお迎えは17時以降と決められています。長期休暇では半日のみの利用などアレンジも可能です。園庭は全て策で囲まれており、指導員がいないと子どもたちは部屋の外に出ることはできません。小学校や幼稚園へは市が運航するシャトルバスで子ども達は送迎されます。子どもを一人にするという習慣がないので、信頼できる大人が責任を持って子ども達を送迎することが根付いています。個々のお便り帳はなく、プリント配布は基本行われません。教室の前に小さなホワイトボードがかかっており、その日の連絡事項が全て掲示されます。小学校とはメール、市役所のお手紙便等で子どもの情報を共有し連携します。
(写真5 保護者との連絡ボード)
センターが提供する活動では、例えば、3?5歳ではダンス、音楽、パントマイムなど、6?14歳の活動は外遊びやゲームなど日により多様なプログラムが提供されます。学校が半日となる水曜日の午後や、土曜日、バカンスなどの長期休暇は、ただ遊ぶだけではなく、文化を提供することも意識されています。例えば地域の伝統工芸である革細工の活動も提供されます。その他、特別プログラムとして映画、カヌー、動物園の遠足などが行われます。子ども達は学校が終わった後、おやつを食べ、その日の活動に参加します。
センターでは子どもを持つ家族に対する支援も活発に行われています。例えば、家族参加できる遠足などのイベント企画運営の他にも、保護者対象の勉強会(テーマは家族の作り方など)、一か月に一回、専門家(精神科医など)を呼んで話し合う場の提供(アドバイスをする場)、一年に一回、一般的なテーマを話し合う場の提供(反抗期、子ども返り、性的なもの、生理など)などが行われています。
(写真6 給食メニューの提示)
(写真7 野外スペース(園庭))
集団生活の中で、子ども達が衝突した場合、必要に応じて、学校の先生、保護者、市が介入しますが、ほとんどが解決するそうです。センターの職務管轄を超えるような案件(DVなど)が発生した場合は、直ぐに市に連絡し対応してもらいます(因みに不登校問題についてはシャトールノー市では聞いたことがないとのことでした)。また、保護者との問題にも対応しています。一例として2000ユーロ給食費滞納した家族がありました。このようなケースでは保護者と連絡を取ろうとしても連絡が取れず、親戚の方に支払ってもらえるなど解決したケースはごくわずかだということです。しかし、センターではこのような家族にこそ社会的サポートを提供することが使命であるし、子どものことを思いやって対応することが大切であると考えているそうです(他市では、弁護士や税理士が対応する場合もあるそうです)。
センターの利用家族数は約800家族(3000人)、子どもの利用者数は70人程度(市内小学校と幼稚園の全児童数は490人程度)です。対し、センターに配置されたフルタイム職員は9人(35時間勤務)、パート職員は7人(30時間勤務)、給食職員は9人の合計25人で運営をしています。非常勤のシフト表はスタッフルームに掲示され、有給はずらして取ります。夏休みも2か月間取得します。親が職員として働いていたとしても、子どもが利用することは可能です。えこひいき等が発生しないように、上司が監視・対応します。ストライキについては職員全員にその権利があると考えられています。通常、ストライキの時には市が子どもたちを預かる場を別に提供するそうです。しかし、以前のストライキ時に市では対応しなかったため、保護者同士が連絡を取り合い、預かれる保護者が預かったそうです。
(写真8 活動に用いる画材等)
スタッフ数、教育、衛生面等、規則に沿った施設なのか、国から4年に一度検査が入ります。シャトールノー市はここ数年書類でクリアしていますが、クレームが発生した場合は指導が入ります。 視察日に放課後児童クラブの遠足があり同行しました。0歳からベビーカーに乗って参加可能なロックコンサートです。子ども達は仮装しセンターから会場までバスで移動します。
(写真9 遠足(ロックコンサート)の様子)
(写真10 子どもたちの仮装)
お誕生日会にロックを行う文化がフランスにはあるらしく、子ども達はロックに対してあこがれを持っているそうです。3歳児も肩車の上で、ノリノリで踊っていたのには吃驚しました(入口ではなぜか耳栓を頂きました)。
小規模な市ですが子育て支援は非常に手厚く、充実したプログラムが提供されていると感じました。放課後児童クラブの指導員においては業務過多などの過重労働は見受けられず、持ち帰りもほとんどないそうです。やりがいを感じながら自分のライフスタイルに合わせ働くことができる環境が提供されていると感じました。
謝辞;現地での案内・通訳をしてくださった竹野-Maury-詠子さんに深謝します。この視察は文部科学省科学技術研究費基盤研究(C)(15K00727)の助成を受けました。
レポート:札幌医科大学医学部公衆衛生学
大浦 麻絵