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“正解は1つ”じゃなくていい 未来につながる自分だけの強み

2007年に大ブレイクし、2011年頃から子ども向けのライブ活動を行っている小島よしおさん。お笑い芸人を目指すようになったきっかけや、子どもたちの心をつかむために意識されている工夫についてお話いただきました。


(※本インタビューは情報誌「じどうかん」2024夏号に掲載されています)



〝お笑い〟との出会い


子ども時代はとにかく身体を動かすことが好きで、校庭や公園を駆け回ってました。陣取りや色おに、ボール遊びが多かったかな。小学1年生のとき、プロ野球選手を夢見て少年野球チームに入ったんです。入ってすぐにチーム合宿でコントをやったのですが、僕は一番年下というのもあって、牛の「モー」と言う鳴き声だけの役でした。「モー」のひと言なのに、みんなが笑ってくれて、とても嬉しかったのを覚えています。この体験が「お笑い」の原点かもしれません。その影響からか、クラスでコントをやったり、学級委員長や応援団長に立候補したり、とにかく目立ちたがり屋になりました(笑)。


本格的に芸人を目指し始めたのは大学時代。新入生歓迎ライブを観に行ったらおもしろくて。僕も人前に立ってたくさんの人たちを笑顔にしたいと、大学サークルの「WAGE(ワゲ)」としてお笑い芸人を目指すようになりました。


WAGE解散後、ピン芸人になりたいと言ったら、当時のマネージャーからも「ネタもまともに考えられないのに無理だ」「どうやって芸人を続けるつもりなんだ」と厳しい助言もありました。そうして試行錯誤を重ねたある日、先輩の何気ないフリから「そんなの関係ねえ」のフレーズが生まれて、これがウケてブレイクにつながりました。正直、くじけそうになったことは何度もあったんですが、何度選挙に落選しても前を向いてめげない父、「なんくるないさ」が口癖の母、仲間と家族のおかげで今があります。みんなに感謝しています。


子どもの気持ちに寄り添うために



▲イベントでは大ジャンプを披露(公式X @yoshiopiiyaより)


ブレイクから数年後、一発屋の宿命でもある「低迷期」を迎えました。これを抜け出すきっかけも、先輩からの「試しに子ども向けにやってみたら?」のひと言です。


最初は、暗転の暗さや、ヒーローショーの悪役が怖くて泣き出してしまう子がいたりで試行錯誤でした。でも、だんだん子どもたちと波長があって、手ごたえを感じるようになりました。6年後くらいに「まだ見たい!もう終わっちゃうの?」って言ってくれた子がいたんです。うれしかったですね。


順調に進みはじめたら、今度はコロナ禍でライブは自粛。なにかできることがないかと考えていたら、知り合いの構成作家さんから「子ども向けのYouTubeをやってみないか」と誘いがあり、「おっぱっぴー小学校」「ピーヤの休日」の開設につながりました。「時計の読み方」「九九」や「野菜の歌」などは子どもたちや保護者の皆さんから多くの反響をいただきました。


ライブでは、お客さんにも参加してもらって一緒に楽しんでもらうことを考えるようになりました。サルに変身するヒーローショーで、変身に必要なバナナを観客席に仕込んでおいたり。そうすると、子どもたちは「後ろ後ろ!」「そこにあるよ!」と教えてくれるんです。大人相手だと、声が出てない人をいじって笑いにすることもありますが、子どもたちに対してはやりません。自然に身体が動いたり、声が出たり、参加したくなるようなライブ作りを心がけています。


子どもと一緒に考える


子ども向けライブ活動がきっかけで、2021年にニュースサイト「AERA dot.」で子どものお悩み相談を不定期で連載することになりました。子どもたちの悩みや疑問について一緒に考えよう、というコーナーです。質問は編集者さんから事前にいただくのですが、回答を考えるとき、気をつけていることが2つあります。


1つ目は「正解」は1つだけではないこと。僕一人の意見や経験だけでは偏ってしまうので、後輩や知人とディスカッションしてさまざまな意見や考えを出してもらい、いろんな選択肢というか、考え方に基づいた回答をするようにしています。


2つ目は、自分や近い経験をしてきた人の言葉を盛り込むことです。その子と同じような気持ちになったから「僕もこうだったよ」と伝えたり、「僕の友だちや後輩はこう言ってるよ」というように。


そして、この相談をまとめたものが「小島よしおのボクといっしょに考えよう」という本になりました。大谷翔平選手には及ばないですが、できるだけたくさんの子どもたちに読んでほしいので、もう1冊の本と一緒に、サインを入れて児童館のみなさんにプレゼントしました。


僕、今年2月、子どもが生まれたんです。子育ての合間に活動することも増えて、今日も朝早くから取材をしてもらい、この後ミルクをあげる予定です。子どもたちに接する機会は多かったけど、子育てはまったくの別物だと身にしみる毎日です。


これから先、「おぱぴまる(息子)」が成長しても、自分の気持ちや意見を言いやすい、いつでも話を聞いてあげられるような大人でありたいと思います。そして、僕が家族や仲間と支え合ってこれたように、僕たち大人同士が関係を大切にし合うことが、めぐりめぐって息子だけでなく、子どもたちみんなによりよい寄り添い方ができるんじゃないかなと思っています。


またちょっと宣伝させてください(笑)。夏に初めてのイベント「野菜-1グランプリ」を開催しました。「野菜をもっと面白く」をコンセプトにいろんな芸人さんと盛り上げました。野菜とお笑いの融合を目指します(笑)。そして、児童館で働かれるみなさんも、一緒に子どもたちの笑顔を広げていきいましょう!



▲『小島よしおのボクといっしょに考えよう』/朝日新聞出版



▲稲垣栄洋さんと小島よしおさんの共著「最強無敵の雑草たち」/家の光協会



▲本を読む子どもたちの様子(沖縄県那覇市 くもじ・にじいろ館)



▲サイン入りの本を手に取る子どもたち(福島県本宮市 本宮第2児童館)



▲本を受け取った子どもたち(石川県野々市市 つばきの郷児童館)





<プロフィール>
こじま よしお
1980年11月16日沖縄生まれ、千葉で育つ。早稲田大学教育学部卒業。
2007年に「そんなの関係ねえ」「オッパッピー」でブレイクし、ユーキャン新語・流行語大賞候補にノミネート。2020年からYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」「ピーヤの休日」を開始。2024年出演の「情熱大陸」が「ギャラクシー賞」1月度月間賞に選出。全国各地の子ども向けライブを年間100回以上行う。

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