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ようこそ、乳幼児ママ&パパ! 児童館デビューのススメ

「子どもが産まれて、はじめての育児や家事に精一杯」「引っ越したばかりで、悩みを相談できる人が近くにいない」「そろそろ外との関わりを持ったほうがいいかな」など、乳幼児のお子さんをもつ保護者の心配や不安は尽きません。そんなときにおすすめなのが、児童館の利用です。


児童館というと小学生が放課後に利用するイメージが大きいかもしれませんが、多くの児童館で子育て教室や絵本の読み聞かせなど、乳幼児向けのさまざまなプログラムを開催しています。


今回は、自身も子育てママの埼玉県新座市福祉の里児童センター館長の安田昌代さんと、乳幼児事業を担当している東京都港区麻布子ども中高生プラザ副館長の山本博之さんに、乳幼児ママ&パパが児童館をどのように利用しているか、その様子を伺いました。



乳幼児のママ&パパは、何をきっかけに児童館に来館されるケースが多いですか?


安田 福祉の里児童センターでは、平日の午前中に乳幼児向けイベントを行うことが多く、それを目掛けて来館される方が多いです。そういったイベントの告知は近隣のマンションの掲示板でお知らせしたり、保健センターや産婦人科などにもお便りを置かせてもらったりしているので、それを見ていらっしゃる方も多いと思います。


山本 麻布子ども中高生プラザのある港区では、妊婦さんに配布される冊子があり、そこに利用案内が書かれていますが、保健センターなどでの掲示も今後行っていきたいと思っているところです。


安田 初めて来られる方のきっかけはイベントが多いですが、過ごし方としては、自由に過ごすことを目的に来館される方がほとんどです。施設の中に「ちびっこるーむ」という乳幼児専用の部屋があるので、そこでお子さんを遊ばせていらっしゃる方もいますね。


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▲乳幼児専用の部屋「ちびっこるーむ」(福祉の里児童センター)

山本 うちの館では、月に一度身体測定をしています。保健師さんが来て発育相談にものってくださるので、それを目指して来館される方が多いです。あとは、生後6ヶ月以下のお子さんを対象にした“児童館デビュー”の場をつくっていて、そこに参加して常連になっていただくパターンも多くあり
ます。



子育て相談もできますか?


安田 初めて来館された方に利用のご案内をしていろいろ話をするなかで、発育のことや気になっていることを話される方もいらっしゃるので、そういうときには個別でお話を聞きつつ、必要に応じて必要な窓口をご案内しています。ですが、いきなり相談というより、遊びながら関わっている中でいろいろと話が出てくるので、まずは来館された方と関係を築くということを、職員みんな大事にしています。


山本 育児の相談としては、「離乳食」「寝ない」「歩き始めるのが遅い」というのがありますね。専門知識を持つ歯科医師(または歯医者)さんが毎月「子どもの姿勢」について話をしてくれる回もあって、それは一歳未満のママに人気です。我々がお悩みにお答えすることももちろんありますが、同じくらいの月齢のママ同士でうまくつながって悩みを共有したり、共感したりということが、心をラクにしてくれるように思います。


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▲歯科医師による講話の様子 (麻布子ども中高生プラザ)

安田 SNSなどで他のママが投稿している立派な離乳食の写真を見て、「自分はできていない」などとプレッシャーを感じて悩みにつながってしまうケースもありますね。


山本 それはあります!そういうママには、市販の離乳食でもなんら問題ないし、もっと手を抜いていいからねと伝えて安心してもらいます。



具体的にはどのようなお悩みがありますか?


安田 最近も、1歳前のお子さんを持つママが新座市に転入したばかりで来館されたのですが、知り合いもいないし、パパの帰りも遅いというので育児に疲れきってしまっていて「子どもがかわいく思えない」とすごく沈んだ顔をしていらっしゃいました。もう今にも涙がこぼれるんじゃないかというくらいの感じで。でも話を聞いたり、お子さんと一緒に遊びながら関わっていたことで、だんだんと表情が変わっていったんです。他の利用者との繋がりもできていき、自分の子どもを褒めてもらったり、他の子と関わったりする中でママの気持ちに大きな変化があったことがわかります。今もほぼ毎日来館していただいているのですが、その変化はすごく印象に残っています。


山本 うちでは、双子のママから、双子や多胎児が話をできる会を催してほしいというリクエストがあり、実際に行いました。その中でやはり悲壮感を強くお持ちの育休中のパパの参加があり、「今は育休中だけど、この後自分が復帰したらママがどうなってしまうだろう」と不安を抱えていらっしゃいました。近所に住んでいる方だったので、児童館をもうひとつの居場所と思って来てもらったらいいという話はしましたが、同じ境遇の方同士でお話する場の大切さも身にしみました。

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▲乳幼児向けプログラムの様子 参加した親子と手遊びをする安田さん(右手奥)



児童館に行ったはいいけど、常連の利用者同士が集まっていて孤立してしまったという話も聞きますが、そうならないようにできることはありますか?


安田 先ほど山本さんから年齢別の催しの話がありましたが、うちでもそういった集まりをやっていて、その会を児童館デビューにしている方も多いので、ママ友がほしいという方はそういった会に参加するのがいいと思います。私自身も育休をとっていたときに実際に親子集まりに参加していて、そこで出会ったママたちとは今もつながっていて、仕事のときに子どもを預けたり預かったりという関係をつくれています。とは言っても、親子2人でのんびりと過ごすことを目的とされている方も多くいらっしゃるので、集団に入れないことを「自分に合わない場所」というふうには決して思わないではほしいですね。


 


乳幼児が利用するにあたって、児童館ならではのメリットはありますか?


山本 児童館ならではというと、異年齢交流があげられます。うちは放課後児童クラブ(学童保育)も行っているので、小学生の子たちが小さい子の面倒を見たがって一緒に遊んだりしています。夏休みなど長期の休みのときには、乳幼児のための「こそだてひろば」のお手伝いをしてくれる小学生を募集しますが、多くの子が集まってくれます。ママたちも、近い将来自分の子があんなふうになるのかなとイメージをもつことができますし、小学生のほうもママから「遊んでくれてありがとう」と言われるとすごく嬉しそうにしています。小学生にとっても自己肯定感につながって、本当にいい交流だなと思います。


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▲小学生ボランティアによる乳幼児向け紙芝居の様子 (麻布子ども中高生プラザ)

安田 乳幼児の頃に来館している子が小学校になってから来てくれることも多く、成長を見られるのも嬉しいですよね。学校のちがう子ども同士が児童館で仲良くなって交流が広がって児童館でないところでも一緒に遊んでいたり。そうすると、子どもが地域の中で安心して過ごせる場所が増えていくと思うので、児童館がそのきっかけになっている嬉しさは大きいものです。


山本 そうやって地域の人たちや子どもたちと親子が一緒の場を共有しているというのも児童館のおもしろさだと思います。今はコロナ禍で難しいところもありますが、そういう光景はこれからも大事にしていきたいですね。


児童館は公共施設であり、入場料は基本的に無料。登録カードに連絡先を記入すれば初めてでもすぐに利用できます。現在は新型コロナの影響で利用時間が制限されている児童館もありますが、朝から夕方まで利用でき、土日も開館しているところも多くあります。現在は自宅でお仕事をされる家庭も多いと思いますが、家以外のもうひとつの居場所として、気軽に児童館を活用するのはいかがでしょうか。

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