withコロナ時代の児童館へ、居場所づくりへの新たな試み
児童健全育成推進財団が5月に実施した児童館緊急実態調査によると、新型コロナウイルス感染症対策のために約8割の児童館が「臨時休館」を経験しました。その後、5月上旬の緊急事態宣言の解除を受けて、現在児童館も徐々に再開し始めています。今回は全国でも先駆けて5月中旬より再開した、愛・地球博記念公園内にある大型児童館「愛知県児童総合センター」における、安心安全を模索しながら、子どもたちや保護者の方々の居場所づくりへの新たな試みをご紹介します。
突然の再開
▲愛知県児童総合センターの外観
「予定より2週間以上前倒しで急遽オープンすることになったので、運営体制を整えるのが大変でした」愛知県児童総合センターに勤める阪野大介さんはそう語ります。阪野さんはセンターに勤めて19年、現在主査を務め他職員をリーダーとしてまとめる立場にあります。「県内の小型児童館はまだ臨時休館の最中でしたが、県の方針として先んじて大型児童館が開館することになりました」
尽きることのない感染症対策
▲利用者への注意喚起
まだまだ開館事例が少なく基準がわからないなかで、どのように安全を担保するか、葛藤は尽きません。「館内のあらゆる場所や遊具の消毒、密にならないよう飲食スペースのテーブルの配置を工夫するなど、さまざまに感染症対策を施したけれども、これで大丈夫!と思うには迷いが尽きませんでした。安心してご利用いただけるよう、やりすぎるくらい用心した方がよいと思い対策をしました」。
雨降る中での「再開」
▲再開した子育てひろば
再開日5月16日(土)の天気は雨。以前ならばむしろ利用者が多くなるタイミング、果たしてどんな状況になるのか、不安は尽きなかったそうです。「9時から12時の間で、60人ほど入場、20人ほどが退場していました。雨の土曜日としては驚異的な少なさでした。未就学児の親子がほとんどで、小学生が走り回っているような様子もありません。再開の告知が十分にできていなかったこともあった」と振り返ります。大きなトラブルもなくほっとした半面、もどかしさも感じたそうです。
少しずつ戻った子どもたちの笑顔
▲6月の館内の様子
あれから1カ月。現在はどのような状況なのでしょうか。「入館者は、昨年の同じ時期と比べて半分以下に減っています。普段はリピーターの方も多いですが、最近は初めて来館される方も増えているように思います」。まだまだいつも通りとまではいかないものの、少しずつ子どもたちの笑顔が戻ってきた様子もあります。「よく利用されてた親子が、再開してからまた訪れて元気な様子を見せてくれました。遊べるようになってよかった、という声も聴きます。こちらも嬉しくなりますね」と阪野さん。
再開後、新しいプログラムとして地図のマークと看板を手がかりに、次の行き先を探しながら館内全体を行ったり来たりする「どこだ?どこだ?Ⅱ」を開始したそうです。これは館でもともと人気だった「ハンティングワード」という文字を探して組み合わせるプログラムに代わる非接触型のもの。看板のあるポイントにたどり着くと、そこには2つ以上の選択肢が書いてあり、参加者がどれを選んだかによって次の行き先が変わります。参加者によってコースが変わるので密にならず、職員が対応しなくても、参加者自身で答え合わせができます。
また館内では、臨時休館中に制作したおうちにある材料でできるさまざまなつくるあそびの動画も流しています。現時点ではその場でつくるあそびのプログラムを実施することはできませんが、少しでも遊びのヒントになればという思いで紹介しているそうです。遊びの動画は、YouTubeでも配信しています。
withコロナ時代の児童館へ
▲3密を避け、館内をめぐる遊びを開発
「今後は、プログラムの参加者数を減らして開催してみたり、夏休みの企画としても展示をメインにしてみたり感染防止をしながら取り組もうと思っています。展示は、谷川俊太郎さんの『なんだかうれしい』という本をヒントに、さまざまな作家さんやアーティストさんの『なんだかうれしい』という気持ちを表現するものを計画しています」。
これからの児童館でのふれ合いをどのように見守ればよいか、阪野さんは悩みます。「先日からおもちゃの貸し出しもスタートしました。ままごとセットで遊んでいた3才の子が、たまたま遊びに来ていた2才の子に『一緒に遊ぼう』と声をかけたんです。それは児童館らしい素晴らしい光景なのですが、不特定多数の来館者がいて、保護者の考え方もさまざまなので、今の状況では非常に悩ましいところです」。
withコロナ時代の遊びをどのように考え子どもたちに寄り添っていくか、全国各地の児童館も、さまざまに対策を凝らしながら開館している状況です。児童健全育成推進財団では、安心安全に配慮しながらも子どもたちがのびのびと遊べる環境が増えるよう、「児童館のための新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を作成しました。全国の児童館でも運営の指針となっています。子どもたちや保護者のみなさまにも、家でも学校でもない第3の居場所として、ぜひお近くの児童館をご利用いただけたらと思います。