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ベテラン児童館職員からのメッセージ「継承したい8つのこと」

杉並琶善福寺児童館長(当時) 鈴木 良東さんから後輩職員に向けてのメッセージをお寄せいただきました。


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児童館職員として、子どもや保護者に寄り添ってきた30数年間を振り返り、後輩職員に継承したいことを以下8点にまとめてみました。


歓迎して、受け入れる


「よく来てくれたね!」。子どもが来館したら、心から歓迎して受け入れます。この児童館を選んで遊びに来てくれたことに感謝し、笑顔で挨拶します。名前を呼び、近況を聞くなど、コミュニケーションをとります。何気ない会話が安心感を生み、温かい雰囲気をつくると思います。


初めて来た子やおとなしい子には特に丁寧に関わります。やんちゃな子や気になる子には、個別にも会話をしよく見守っていることを伝えます。


聴き上手になる


子どもたちは、安心するとたくさん話をしてきます。楽しかったこと、うれしかったこと、悲しかったこと。話したいのに話せないと、モヤモヤしてしまいます。「話すこと」は「放つこと」にもなるのです。子どもは、信頼する大人の前では素の自分を出します。大切なことを相談したり、言語が不十分な小さい子の場合は泣いたり怒ったてりして、気持ちを訴えます。身近に聴いてくれる大人がいることが重要なのです。


一人ひとりのやりたいことを応援する


子どもたちから「いっしょにドッジしようよ」「将棋の相手して」と、遊びに誘われます。共に遊び、共に楽しむことで、子どもたちが親近感を感じ、信頼されるようになります。でも、遊びの主人公は、子ども。誰もが自分の好きな遊びを発貝できるように、子どもたちだけで遊びが続けられるように、環境を整え、見守ります。子どもに、やりたいという意欲があるときが成長のチャンス。自発的な取り組みだからこそ、創意工夫し、困難を乗り越え、前に進めるのです。子どもたちは、失敗をしても納得し、改善していきます。


異年齢の活動で成長を支援する


児童館の強みは異年齢での活動です。そのよさは、互いの違いを理解しどうすれば一緒に楽しめるかを考えルールを工夫するところです。多様な個性が交わるからこそ、豊かでユニークな遊びが創造されます。また、仲間とのかけがえのない体験の蓄積で、人生を肯定的にとらえるようになります。イベントをやり遂げたときの達成感、息の合った発表ができたときの連帯感、ドッジボールで勝ったときの興奮や喜びなど、仲間とのさまざまな感動体験を通して、「生きているっていいな」と感じ、人に対する思いやりの心も育まれていきます。


集団の力を生かし、個々の課題に対応する


子どもの課題は多様ですが、集団活動を通して個々の課題に対応していきます。ルールを守れなかった子は、集団遊びを通して、自分勝手に遊んでいても楽しくないことに気づいていくのです。大人の注意は聞かなくても、友だちや上級生が言うことは理解できることもよくあります。乱畏ですぐ手が出てしまう子は、体を使った遊びで発散しますが、静かな遊びを心地よく感じる経験も大切です。ほかにも、自己主張の弱い子が劇グループに入って表現することの喜びを知る、落ち着きがない子が遊びのリーダーになったりする。集団があるからこそ、固性が引き出せるのです。子どもは集団でのトラブルを解決しながら、ゆっくり成長していくのです。


いいとこ探しで、自己肯定感を育む


口よりも手が先に出る、忘れ物が多くて不潔、遊びもズルをして勝とうとするので、周りから敬遠されている卜フブルメーカーのA君。3年生になって、自分への評価が低いことに気がついたようです。「A君が自信がもてることは何かな?」と、職員は考えます。コマ回しが得意なことを思い出し、A君に1年生のコマの先生になってもらうことを提案したら、即、快諾。その後はコマ先生と慕われ、予想以上に丁寧に教えコマの検定表もオリジナルなものをつくリ、ユニークで好評となりました。発表会では、先生として技を披露しました。保護者の皆さんからも「児童館で活躍してるね」とおほめの言葉をいただきました。なぜかそれからは、少しずつ清潔にもなってきています。


困っている親子に愛の手を差し伸べる


ルールを守らず好き放題に暴れ回る、職員に暴言を吐くなど、手を焼く子どもはいませんかつ逆に、おとなしすぎる、目がうつろで元気がない、このょうに心配な子どもはいませんか?敷居の低い児童館だからこそ、子どもの素の姿が貝られます。職員は問題行動等の背景に着目し、対応していきます。固別対応が必要であると意識すること(気づき)は重要です。職員間で情報を共有し、必要に応じて専門機関につなげます。対応の難しい子の保護者も、同じように対応が難しいことがありますがその子のいいところを探してほめると心を開くこともあります。困難も多いですが、寄り添い、支援を継続していくことが肝要です。困らせる子は固っている子、固らせる親は困っている親なのです。


地域ぐるみでの子育てを推進する


子どもたち一人ひとりのやりたいことを実現するには、ボランティアのカが必要です。ボランティアは自分の得意分野を生かして子どもたちと関わりながら、生きがいを惑じると同時に子どもたちを理解していきます。子どもにとっては、いろいろな大人と関わるとで、多様な価値観にふれることができます。自分と気の合う大人と遭遇するチャンスであリ、成長を支えてくれる頼もしい存在になります。これは子どもが大人を信頼する土台になり地域の中で挨拶し合える関係となれば子どもたちは見守られている安心感をもつようになります。また、子どもを中心につながった大人たちは、地域の課題に関しても「子どものためなら」と頑張り、取り組んでいきます。すべての子どもが健やかに育つ地域づくりのために、職員には、大人と子ども、そして大人同土をつなぐパイプ役(ネットワーカー)としての力量が求められます。子どもに関する専門家として、また、大人の力を引き出すファシリテターとしての知識と技能が高められるように、研鑽していかなければなりません。


児童館職員として心がけてきたこと


これまで、たくさんの子どもたち、保護者、地域の方と出会ってきました。私が常に心がけていたのは、「みんなが笑顔」になること。そのために、誰に対しても明る<挨拶をし、積極的にコミュニケーションをとりました。子どもであれ、大人であれ、良いところを探して、肯定的に関わることとし、このことによリ、互いの関係がスムースになりました。


誰もが、素晴らしい潜在能力をもっていると侶じ、その力を引き出し、児童館が輝ける場となるよう努めました。子どもたちには、「自主企画」を実施し、さまざまなジャンルで発表会や展示をおこない、認められる体験を増やしました。大人たちには、細かな役割分担を提案し、自分に合った役割が貝つけられるよう配慮しました。それは、みんなが得意分野で活動してほしいからです。その結果、子どもも大人もやりたいことができ、認められることで、笑顔が広がっていきました。そして、みんなの笑顔が、次の仕事の活力になっていたと思います。


出典:じどうかん2017秋号

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