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識者・応援団からのメッセージ

為末 大 さんからのメッセージ

楽しいことだから、がんばれる!
「夢中型」の生き方を大切にしたい

 

為末 大 (ためすえ だい)さん

1978 年広島県生まれ。法政大学経済学部卒業後、大阪ガスを経て、2003 年 プロ陸上選手へ転向。「侍ハードラー」の異名を持つトップアスリートとしてシドニー、アテネ、北京と五輪に3大会連続出場。世界選手権では2001 年、05 年に銅メダルを獲得(トラック種目で2つのメダル獲得は日本人初)。12 年6 月 に引退。現在は、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリートソサエティ」代表理事、子どものための陸上教室開催、テレビコメンテーターなど、幅広い分野で活動している。著書に『日本人の足を速くする』(新潮新書)、 『走る哲学』(扶桑社新書)、『子どもの足を速くする!』(扶桑社)、『諦める力』(ダイヤモンド社)など、多数。オフィシャルサイト「爲末大学」開校中。







 

男子400m ハードルの日本記録を持つ元トップアスリートの為末大さんは、体育会系の人というよりは物静かな哲学者の風情。子どもの頃から読書家で、ご自身もたくさんの著書を出されています。今回は、小学生から始めた陸上競技を通じて学んだことや気づいたこと、子どもたちに伝えたいことなどを語っていただきました。

 

世界一になってみたい

  僕、小学生のときは読書部だったんです。自分ではやんちゃな面もあったと思っていますが、母親の印象では「おとなしい子だった」そうで す。姉と妹の三人きょうだいなので、人形遊びもさせられていましたし(笑)。ただ、幼稚園の頃から足は速くて、運動会のかけっこではいつも1等でした。小学3年から地域の陸上クラブに入ってさまざまなスポーツを体験し、中学3年で出場したジュニアオリンピックでは、短距離走で当時の日本中学記録を更新しました。
 ずっと短距離走を続けてきましたが、 18 歳のとき、ハードルに転向しました。スポーツ選手には早熟型と晩成型があって、僕は早熟型。小学生までは身長もタイムも抜きん出ていたのですが、中学生の途中で身長が止まってタイムも伸びなくなってきたんです。晩成型の選手はだんだん伸びてくるので、「このままじゃ、勝てなくなる! 1番じゃなくなる」と 思い、「だったら、1番になれる競技に変えよう」と、ハードルを選択しました。ハードルは、短距離走に比べて競技人口が少ないので競争が比較的緩いんです。また、歩数を自由に変えられるなどコントロールできる要素があり、戦略を立てやすい点も自分に向いているかなと思いました。
 大学卒業後、実業団選手として大阪ガスに入社しました。午前中に仕事をして午後は練習という毎日でしたが、安定した環境のなかで競技をするよりもギリギリの環境に身を置いて勝負したほうが自分はモチベーションが上がるのではないかと思い、 退職してプロになりました。当時の僕にとっての一番の夢は、「陸上選手として世界一になってみたい」ということでしたから、先のことを考えるよ り、今の自分に正直な生き方をしたかったんです。

 

陸上を通じて伝えたいこと

 小学生を対象に、かけっことハードルなどの陸上競技を中心にした親子参加型のスポーツイベントを日本各地で開催しています。近い将来、常設の陸上クラブを作る予定です。親子の絆も深めてほしいので、「手つなぎ鬼」など、親子でふれあえるゲームもプログラムに取り入れ ています。かけっこが速くなる方法やハードルを上手に跳ぶ方法を指導しますが、それだけが目的ではあり ません。陸上競技を通じて子どもたちに何かをつかんでほしいんです。
 かけっこはタイムがあるので、「さっきより速く走れるようになった」という感覚を体験できます。「チャレンジすれば、少しずつだけど自分は成長できるんだ」という実感を積むことは、将来どんな道に進んだとしても役に立つと思います。ハードルのほうは、高さをまちまちに設定して、 自分の越えられる高さを選ぶことと、越えられるかどうかわからないものにチャレンジすることを体験してもらっています。それから、早いペースでどんどん跳ばせるので、転んだ子がいたとしてもだれも見ていません。失敗が怖いのは人に見られているからで、だれにも見られていなければ失敗も怖くない。「失敗なんか気にしないでチャレンジしていいんだ」ということも、子どもたちに伝えたいですね。
 1回のイベントで、100人から300人が集まります。運動が得意な子は最初から目を輝かせていますが、運動が苦手な子がいつもより速く走れるようになったり、ハードルが跳べたりすると、目をキラキラと輝かせます。子どもたちが自分に自信を持った瞬間に居合わせたとき、 幸せを感じます。選手育成が目的ではなく、人生にとって大切な何かをつかんでもらえるようなクラブが作れたらいいなと思っています。


(情報誌「じどうかん」2014春号より抜粋)

 


為末大さんの著書『「遊ぶ」が勝ち 』・・・為末さんが「苦しい時、僕を原点に戻してくれた」という名著『ホモ・ルーデンス』を糸口に、「遊び」の大切さについて書かれています。

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