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識者・応援団からのメッセージ

内田 伸子さんからのメッセージ

子どもにとっての遊びとは
脳を快適な状態にしてくれる大切なもの

 

内田

内田 伸子 さん

1946 年群馬県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業、大学院修了、学術博士。専門は発達心理学、認知心理学、保育学。お茶の水女子大学文教 育学部専任講師、助教授、教授を経て、1998 年同大大学院人間文化研究科教授、2002 年より子ども発達教育研究センター長、2004 年より文教育学部 長、2005 年よりお茶の水女子大学理事・副学長、2012 年より筑波大学常勤監事、2014 年より十文字学園理事・十文字学園女子大学特任教授、筑波 大学客員教授、お茶の水女子大学名誉教授。主な社会活動として、NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセ「子どもチャレン ジ」の監修、「しまじろうパペット」の開発など。著書に『子育てに「もう遅い」はありません』『発達心理学——ことばの獲得と教育』など、多数。









 

 長きにわたり発達心理学の研究をされ、現在も大学で教鞭を執られている内田伸子さんに、子どもの成長にとっての遊びの重要性について伺いました。人間の脳のメカニズムについて、大規模な調査を経て結論に達した子どもの発達に関する研究についてなど、まるで大学の講義に参加しているような、興味深いお話を聞かせていただきました。最後に、日頃から多くの子どもたちと関わっている児童館や放課後児童クラブの職員に向けてのメッセージもいただきました。

 

子どもにとって遊びとは?

  私は、小さいときから目に見えないものに関心がありました。高校時代は化学が大好きでずっと実験をしているような、当時では珍しい「リケジョ」だったんですよ。「人間の知能のメカニズムを探るために、言語と認識の関連について学びたい」との思いから大学、大学院へと進みました。この研究の対象となるのは、脳が完成段階の大人ではなく、脳がつくり上げられる過程にある幼い子どもです。このようなきっかけから、赤ちゃんから幼児を対象とした調査や実験を重ね、人間の知能のメカニズムを探る研究を続けてまいりました。

 遊びは、子どもの成長にとって重要ですが、その重要性についてお話ししましょう。人間を含む高等脊椎動物の脳には、快・不快感情を感知する扁へんとうたい桃体という部位があり、子どもが主体的に遊んでいるときにはこの部位が快適な状態にあります。誰かに強制されてではなく、自分の遊びたいように遊んで、「楽しいなあ」と感じると、扁桃体の近くにあって記憶を保存する役割をもつ海馬(かいば)が活性化され、楽しい体験の記憶が知識として蓄えられていくのです。叱られながらやった勉強が身につかないのは、扁桃体が不快感でいっぱいになって海馬が働けなくなるからです。

 遊びとは、仕事と対立する概念ではなく、なまけることを意味するものでもありません。子どもにとっての遊びとは、自発的な活動であり、扁桃体を快適な感情で満たして海馬を活性化させる、脳をすごくいい状態にしてくれる大切なものなのです。

親子一緒に絵本の世界で遊ぶ

 経済格差は子どもの発達にどのような影響を及ぼしているかということに興味をもち、幼児の読み書き能力や語彙力について調査をしました。日本、韓国、中国、ベトナム、モンゴルの大都市に住む3、4、5歳児3000名とその保護者全員、その子たちを担当している保育所保育士や幼稚園教諭にも調査をおこない、家庭環境や所得、親のしつけ、保育形態について調べました。そしてその子たちが小学校に入学するまで追跡し、1年生の3学期に学力テストを実施しました。

 その結果、家庭の所得に関わらず、親子のふれあいを大切にして子どもと楽しい経験を共有したいという「共有型しつけ」を受けた子どものほうが、禁止や命令を多用して子どもを親の思うように育てたいという「強制型しつけ」を受けた子どもに比べて語彙が豊かで学力テストの成績も高くなることがわかりました。保育形態では、自由遊びの時間が長い自由保育の子どものほうが、一斉保育の子どもよりも語彙力が高いという結果が出ました。家庭でも、保育所や幼稚園でも、子どもの主体性を大事にして、子どもの好きなことを十分にさせてあげられる環境が、子どもの発達にとってとても大事なことなのです。

 親子のふれあいを大切にする共有型しつけでは、絵本の読み聞かせもたっぷりおこないます。読み聞かせは、言葉がまだわからない赤ちゃんのときからおこなってほしいですね。なぜならこれは、文字や言葉を覚えるためのものではなく、絵本の世界へ親子で一緒に入っていける、素敵なふれあいの時間だからです。また、子どもが字が読めるようになっても、「一人で読みなさい」ではなく、子どもにとってなじみのある親御さんの声で、語りかけるようにして読んでほしいのです。親子で一緒に同じ絵本の世界を味わって、感想を話し合うのもいいですね。

 

(後略:続きは掲載誌 情報誌「じどうかん」2016夏号をご覧ください)

 

-著書のご紹介-

プレゼント子育てに「もう遅い」はありません

 

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