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識者・応援団からのメッセージ

あそびの意義、児童館に期待すること……堀田力さんからのメッセージ

あそびを通じて地域が育つ

子どもが変わる

児童館で、自助と共助の「人間力」を

財団法人さわやか福祉財団理事長 堀田力 堀田力(ほった つとむ)さん

1934年生まれ。京都府出身。京大法学部卒業。東京地方検察庁特捜部検事としてロッキード事件を捜査、米国での嘱託尋問を担当し、起訴後公判検事として田中角栄元首相に論告求刑を行った。

法務省大臣官房長を最後に退官し、現在、弁護士、財団法人さわやか福祉財団理事長として活動している。


「自助と共助」が「人間力」

人間は、全くの自然環境の中で適切に子孫を残して生き伸びていくためには、生物として大体十人ぐらい産む必要があっただろうといわれています。しかし、科学技術、医学、環境などの進展で簡単には死ななくなり、昔のようにたくさん産む必要がなくなりました。そのため、人為的に少子化を始めているのです。昔ほど簡単に死ななくなったということ自体は素晴らしいことですけれども、それには副作用があって、それが子どもの育ちの面でマイナスにあらわれているわけです。兄弟姉妹がたくさんいれば当然地域には子どもがたくさんいて、お互いに助け合ったり、けんかしたり、ときには妥協したりといろいろあって、その中で生き方を覚えていきます。食べ物の入手が困難で、中には死ぬ人もいて、そういう中で育つのですから、まず、本人がギラギラとした生きる力、「自助」の力というのを持っていないと脱落してしまいます。また、「共助」の力を発揮して、自分のできる範囲で役割を果たしていくことも求められます。つまり、人間としての生き方の基本が、子ども同士の生存競争と共同の中で自然に身につく。「自助」と「共助」の力、すなわち「人間力」が自然に身につく環境になっていたわけです。

 

少子化は、この教育環境を壊すわけですね。ですから、それに代わって、近所の子どもたちを一緒にして遊ばせ、ときには共同の作業をする。大人はそれを離れて見ている。そういう環境を人為的に創り出して、その中で生きる力、「人間力」を身につけさせていく必要があります。

失われた子ども同士の「横の関係」

こうした少子化は、工業化と時期を同じにして進みます。工業社会は、個々人が縦の関係で企業と連なって競争しあうという資本主義の仕組みになっていますので、家庭や地域社会にまで、「縦型」、「個人型」、「競争型」の構造が浸透してきました。こうした背景もあり、やはり地域では、昔のように子どもたちが集まって、一緒にあそび、共同作業をして、その中で「人間力」を身につけていくという関係が断ち切られてしまっています。子どもは家庭では親とつながり、学校では教師とつながるという、大人と子どもの縦関係だけになってしまって、横の関係がほとんど持てません。今や子どもたちは、お互いに知恵を出し合い、「共助」を発揮してぶつかり合い、という経験がもてなくなっています。自主的に考え、感情を豊かに発達させ、意欲的に人とつながり、その中で人間性を発展させるという機会がほとんど奪われてしまう。人と交われない、すぐキレる、すぐ傷つく子どもたちが昔に比べて驚くほどの割合で出てきています。

私はアメリカに子どもたちと一緒に三年半暮らしたことがありますが、向こうは日本よりずっと早くから徐々に少子化を進めていきましたから、コミュニティの維持を何とか続けてきていますね。日本の戦前のように、子どもたちが群れて遊んでいるのです。

 

児童館というのは、昔のように子どもたちが群れて、自ら成長していく機会を人為的につくり出す場所ですよね。子どもたちが自然に集まり、群れ、自ら育ち、「人間力」を伸ばしていく、そのための場所です。昔は地域にそういう場がたくさんありましたから、全国に四七〇〇箇所では数としては全然足りないんですね。

「共助」を広げることこそ、子育て支援

児童館は「共助」の精神を育てる拠点ですね。ただ、数としては圧倒的に少ないので、児童館でやることは一種のモデルであって、こういう子どもたちの育て方、遊ばせ方、大人のかかわり方が大切なんですよということを地域に発信してもらう。民生児童委員、主任児童委員、地域のボランティア、あるいはいろんな団体を通じて情報を示していただくことが必要です。児童館が発するそういうメッセージは、やがて各地で実を結び、昔のように、子どもたちが自然に集まって遊ぶようになる。そういう役割を果たしていただければと思います。

 

今年の四月から始まった放課後子どもプランは、まず学校を開いたわけですから、そこに児童館が関わって、今度は地域の各家庭を開くように広がっていくといいですね。そうすると、冷たい地域というのは消えていきます。親も隣近所とかかわり、あいさつするようになるでしょうし、子どもたちの非行防止、引きこもり防止にも大いに役立つでしょう。ですから、すばらしい効果を上げるのではないかと、私は期待しています。

 

厚労省的には、子育て支援という発想が出てくるでしょう。子育て支援は、それはそれでいいんですけれども、児童館はむしろ、もっと積極的に「共助」の関係をその地域につくり出す拠点で、その関係が広がることが、すなわち子育て支援になる。つまり、子どもたちは「共助」で育つ、その育て方を親が学ぶ、それがすなわち子育て支援と考えるべきで、私としては、いわゆる子育て支援から入るよりも、もっと積極的な、子どもたちが自ら育っていく場とそのやり方を提供するというふうなところまで打ち出していただければ、大変輝かしい役割、一番基本的な役割を果たして頂くことになるのではないかなと思います。

(情報誌「じどうかん」2007秋号より)

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